3月18日(土)
久留米商工会館、2階会議室。
福岡ブロック協議会 LOM支援委員会主催により、昨年の(社)大川青年会議所が開催したローカル・マニフェスト型公開討論会の当時の担当者を講師とし、事例発表兼勉強会が開催される。この委員会は本年、福岡ブロック内ほぼ全ての会員会議所より出向者を受け入れている旨聞いている。当然、本協働事業に対する本年の各地会員会議所の取り組みもこの場で耳に出来るに違いない(実際、様々な情報を耳に出来た。これらは日本青年会議所の担当委員会が関心を持っているものでもある。)。
年初、こうして時間を割いて協議会内の機運を盛り上げようという試みは、この事業に対して関心ある全ての市民にとって意味あることであり、この事業に対して関心のない全ての市民にとっても意味がある。
講師は05年度(社)大川JC理事長であった立花泉さん(本年の福岡ブロック協議会の監事と聞く)と04年度理事長で公開討論会実行委員長を務められた野口雅弘さん(現時点では既に卒業)。
あいにく、昨年の私はこの討論会を拝見していない。会場内で討論会事業を傍聴した参加者の人数の多さや、政治経験の無い新人が倍近い獲得票数をもって現職を破った大川市長選挙の結果は特筆すべき事例として何度も聞いている。こうした目に見える結果は如何なる過程を経て実現できたのか、関心があった。今回はその執行責任者2名が登壇する。両担当者が互いに補足しあって厚みある勉強会になった。
(以下、勉強会要旨兼私的所感)
そもそも大川JCの事業は(社)日本青年会議所が05年度に協働運動としてローカル・マニフェスト推進普及事業を提唱していたから、というよりは地域独自の必要性によって開催が意図された。
・地域経済の沈滞(木工産業を主とする 現状打開に対する地域の要望)
・近隣自治体との合併協議会の破綻(今後の市政に対する市民の不安・関心)
・選挙時の怪文書などの選挙風土(主権行使の目的の履き違え)
などの地域の実情を受け、理事長が決断したことから始まった。この決断を発端として2ヶ月の準備期間をもって事業は実現された。大川市長選挙へは当初より2名の立候補表明があり、選挙が実施されることが事前に分かっていた点も迅速に事業展開できた理由と思われる。
両予定者は比較的問題なく討論会事業への協力を承諾頂いた。(社)大川青年会議所の有志が感じていた上記の危機感をこの二人も共有していたのかも知れないし、どちらが首長として選出されるにしろ、今後の大川市の運営は市民協働・市民参画によってなされるべきものであって、その推進力となるのがローカル・マニフェストであると感じてもおられたのだろう。 実行委員会を急遽立ち上げLOM全体の事業となった(年初から計画されたものではなかった。よって、予算が運営上の問題として浮上してくることになった。)。
討論のテーマをLOMメンバー全員から集め、神吉コーディネータと地元新聞記者に同席いただき(参考意見も貰いながら)、2日かけて選定(選定されたテーマは 行財政改革3点 環境整備3点(下水道問題 クリーク対策 道路問題 の優先順位とその理由、その対応政策) 地場木工産業振興策3点)。(社)大川青年会議所は討論のテーマを市民の生活に密着した分かりやすいテーマであるべきと考えた。限りある事業時間内で、有権者自らの見識のレベルで主体的に政策を選定し、結果、投票率も向上させるべく配慮した。日頃市民が考えもしない役場の中だけの問題をこの場で論じ合うよりも、本来の事業の目的である市民参画型自治体運営実現への端緒とすべく、優先すべき争点を選定している。
5月23日にテーマ選定を終え、翌5月24日説明会を開催し、両陣営にテーマを通知。ローカル・マニフェスト作成時間として2週間ほどを用意したことになる。役場の情報公開能力の差異により、特に新人がローカル・マニフェストを作成するにおいては時間がかかることも予想されるので、この点は留意すべきである。
(予定者からの要望でもあったそうで)情報の事前の拡散を防ぐためにもLOM内では極少数の会員(『2名』と聞く)が両予定者のローカル・マニフェストの内容を知るのみだった。両陣営にはOBをはじめ、青年会議所と縁ある市民も多い。中立・公正を保つ上で、テーマ選定とマニフェストの管理は極限られた者で対応するべきであると判断した(情報の秘匿管理、ないしは外部からの圧力の回避のため)。マニフェストの印刷は陣営が独自に行い、印刷されたマニフェストは当日まで封印された状態で会場内へ持参願った。
また事業を広く告知した効果としてか、事業開催直近になり、新しく3人目の立候補表明が現れた。
内部では順調に推移していた事業ではあったが、大川市民の中では盛り上がりに欠けているように感じたこともあり、各種広報を実施。事業開催の前日の朝には新聞へ折り込みチラシ、市内でのポスターと看板の掲示、LOMホームページでの開催告知、車両での街宣活動や新聞記事へ積極的掲載を図った(会場内アンケートを実施したところ、事業の開催を知ったのは新聞広告・チラシ・ポスターが主だったらしい)。
当日会場内への参加市民は1700名。会場のキャパ1200名を大幅に超え、エントランスにも人が溢れた。用意した配布マニフェストが1200枚であったので急遽増刷する。大川市の有権者33000名の内の5パーセントが来場したことになる。残り95パーセントの有権者への告知のため議事録を作成しホームページへ掲載。告示日前までの短期間に掲載されねばならない議事録の作成には大きな労力を割いた(一言一句あやまたず拾い上げる議事録でなければ中立・公正を保てない)。ここではメンバーのモティベーションが充分に発揮された(この作業は大変でもあるから以降は動画配信、音声配信を試みても良いのでは、とアドバイスがある。本年、私が知っている限りでは 宮城ブロック (社)古川青年会議所が06年1月に開催した公開討論会の様子を現在も音声配信している。詳細を調査中。)。
現職有利の予想は公開討論会を機に変わり始めた(新人候補は地元での知名度は倒的に低かった。)。合併協議会の解消をはじめとする『失政』と地元特有の問題ともいえる環境行政への新人予定者の新しい政策提案に関心を示す市民が増え始めた(実施アンケートではこの公開討論会に来場された方で、2割の方が支持する対象予定者を変更し、無党派でどちらを支持するか決めていなかった方の6割がこれを決定する。)。選挙期間終盤、マスコミ・市民も投票結果については接戦を予想する迄に及んだところ、結果はダブルスコアで新人候補の勝利となった。
担当者が顧みて、事業の成果として上げられることは
・市民と行政との距離が近まった(現在でもローカル・マニフェストのことが市民の中で語られる場面に出くわすことがある)
・首長や行政と青年会議所との関係を新しく築くことができた(首長が例会に講師として来るほどになった)
・討論会以降は青年会議所と市民との関係が以前に増して良好になった(認知度、理解度の向上)
問題点としては
・金がかかった(50万ほど)。
→『大川活性化協議会』が後援(20万の補助)
運営費の不足を補う上では入場料をとる、というのも選択肢ではないか?(前例:柳川JCでは100円 宗像では300円を徴収) 立候補予定者から費用負担協力を得られないか? 会場内で来場者からカンパを求めることは出来ないか?
→今後取り組むべき検証事業の予算組みも問題になるであろう。LOM内の意識を持続させ続け、必要であれば検証事業に向けて毎年予算を計上すべきでる。選挙時単発の『イベント』ではなく、市民参画型政治運動は越年継続されるべきものである。
・ 次年度以降の検証事業の形態が不明である(討論会と検証事業の整合性)
→今後開催されるべき検証事業の形態については研究を進めなくてはならない。市町村レベルでは開催実績が少なすぎることもあり、他地域の取り組みも充分に参考にしながら、検証事業は遂次その地域に最適化・進化させていく必要がある。よって地域間、LOM間の情報共有が大切になる(3月の当委員会後、ラーメン屋で話し込んだ 大阪ブロック (社)枚方青年会議所の前田さんによれば、枚方JCは検証事業を昨年10月に開催済み。近々、事業場内映像や新聞報道、など各種資料をDVDに焼いて頂ける手筈になっている。引き合わせて下さった川島小委員長、ありがとうございました。)。
事業実施を終えて振り返る、始終留意した点、総括
・中立・公正を守ること
・選定テーマは地域のためになるテーマとすること
・マスコミに終始、協力要請すること
・現状、非協力であったとしても選管との連絡は密にすること→活動推移は逐一選管に報告した
・公選法は『グレーゾーン』が多く、解釈によっては細部の可否が分かれてしまうので、市民の利となると判断したことは出来うる限り強行実施すべきこと(議事録の公表にも大川市選管は難色を示したが、『少なくとも』違法ではなかったので『強引に』公開した)
本勉強会は、討論会事業を成功に終えられた二人の講師の力量もさることながら、用意配布された参考資料も詳細を極め、その学びは深みを増した(当日までのタイムスケジュール、収支決算、新聞の取り扱い記事、事業趣旨、アンケート結果、総括、今後の検証事業において取り上げるべきローカル・マニフェストで表明された政策の注視点一覧 など。配布資料の素晴らしさは大牟田青年会議所よりオブザーバー参加された、とある会員も自分のブログのなかで賞賛しています)。この手の文書は事業に関わった各地会員会議所も当然資料庫に保存してある資料ではあるが、こうした資料こそ(JAYCEEに限らず)広く伝えられるべき遺産であると感じた。
今夜この場に居合わせた会員の中には障害を抱え込んでいる事業担当者もいると聞く。立花直前理事長や野口OBが昨年振り絞った、叡智と勇気と情熱とに共鳴できれば、事業の結果という表面上の帰結を越えて、『落とし所』を捏造することなく、JUNIORしか出来ない、JUNIORらしいやり方で『地域の再生』と『JAYCEEへの回帰』そのものに肉迫できるはずだ。
頃は三月、既に臨界点に達している会員は全国に多い。『責任ある立場』という言葉を口の中で反芻し、声をあげることすら出来ずに忍んでいる者も確かにいる。だからといって、余人には彼を落伍者と呼んで欲しくはない。
時が移り、振り返る時、各々は今の自らをどのように総括することだろう。ただ、今この時は最後迄こだわって欲しいと思っている、後輩達は異口同音に本年を『レコンキスタ』、『失地回復』元年として語り継ぐに違いないから。
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